ジュネーブにある国際赤十字博物館に行ってきました。赤十字と聞くと、どんなイメージがありますか?
赤十字は辛い状況にある場所や人々を助けてくれる、そんな存在だと認識していたのですが、こちらの博物館に来て驚きました。「辛い状況や場所」ということは、必ずしも正の中の辛い人だけを指すのではないということを学んだのです。
いわゆる人権です。さて、そのようなことを学ばせてくれた国際赤十字博物館とはどんな場所でしょうか。早速ご紹介していきたいと思います。
Musée international de la Croix-Rouge et du Croissant-Rouge(国際赤十字博物館)
先日書いたアリアナ美術館のすぐ近くにあります。周りに国連など国際機関が集まっている静かで穏やかな場所にあります。
道路を渡ってこのような細い道を入ります。すると・・・・
大きな赤十字シンボルの旗の下に入口が現れました。
1988年に国際赤十字博物館と赤新月博物館という名前で一般公開されたのが始まりだそうです。そして、2013年にこちらの新しい博物館ができました。
11月〜3月は10時〜17時まで、4月〜10月までは10時〜18時まで開いています。入館料は大人15 フラン(約1,750円)です。入館料の中にオーディオガイドが含まれていて、日本語もあります。「Swiss Museum Pass」を持っていると無料で入れます。「Swiss Museum Pass」については以下の記事を御覧ください。↓
受付を済ませると、こちらのオーディオガイドが渡されました。既に日本語に設定してくれてました。親切ですね。
こちらは博物館なので、美術館と違って荷物を預けるロッカーはありませんでしたが、コートをかけておく場所はありました。また、クロークはあったのですが、コロナのためかクローズしていました。
イヤホンを付けて博物館に入ります。一番最初の廊下には、コロナ禍の人々の様子を写した写真が貼ってありました。これは、マスクがみんなの手元になかった時ですかね。口を手で覆って、ソーシャルディスタンスを保って、でも、一緒にワインは楽しみたいからできる限り離れて楽しむみたいな感じでしょうか?
そして、オーディオガイドも始まりました。このオーディオガイドはとてもハイテクで、その部屋に入ると、何もしなくても勝手にその部屋に適した音声が流れてきます。びっくり!まずは「人道主義の冒険」の部屋です。
真っ暗な部屋にたくさんの人々が浮き上がってきます。この時は、この方々が誰なのかわからなかったのですが、進んでいくと少しずつわかるようになっています。
1864年にジュネーブ条約が調印されて、国際赤十字組織が誕生しましたが、そのきっかけを作ったのがスイス人の実業家アンリー・デュナンさんです。アンリー・デュナンさんは、1859年のイタリア統一戦争で悲惨なありさまを目の当たりにし、放置されていた負傷者の救護活動にあたった経験がある人です。その当時の経験を『ソルフェリーノの思い出』という本にして、国際的な救護団体の必要性について訴えたのがきっかけだったのです。本の中で「傷ついた兵士はもはや兵士ではない、人間である。人間同士としてその尊い生命は救われなければならない」とアンリー・デュナンさんは訴えています。
こちらは、その時のジュネーブ条約の原本です。とても貴重な本ですよね。
中央には大きな足のモニュメントがありました。そしてその周りには映像が流れています。その映像は人権を尊重する映像でした。
次の部屋に行くと、何やら歴史を感じる旗が展示されていました。
それもそのはず!こちらは、世界で最も古い赤十字の旗です。
そして、このベストに記されている月のマークは、イスラムの方に配慮して作られたマークだそうです。1876年に導入されています。博物館の入口にもあったマークだったので、なんだろうと思っていたら同じ、赤十字マークだったのですね。
そして、更に2005年、こちらのマークが追加されました。どの宗教からも批判されないマークだそうです。
次の部屋に入ると、たくさんの作品が飾ってありました。
何かのお菓子のパッケージで作られた鳥や、
バイクなど、これらは虜囚達によって作られた作品で、保護してくれたり助けてくれたICRCの代表団員へ向けた感謝の印だそうです。
例えばこちらは、ルアンダ人の方が使った作品で、ピンクは囚人、その中でバッジを付けているのがICRCの代表団員で、その奥には子供のための遊び広場や、難民キャンプなど当時の様子を表現しているそうです。
こちらは、ブリキで出来た作品でナリビアの独立戦争の際に捕虜となったパイロットによる作品で、戦争の中にも慈悲を、と願いを込めて作ったそうです。
作品は30くらい展示されていますが、オーディオでの説明は5つくらいでした。でも、それぞれの作品にストーリーがあって、特別な気持ちで見ることができました。
次の部屋です。ここの部屋では、苦しく辛い環境から脱出してきた方々の話を3分くらいで聞くことができます。
ブースが4つくらいあって、それぞれのブースに入ると、このように掌を差し伸べた方がいます。この方の掌に自分の掌を合わせると、この方の悲しくも壮絶な人生を聞くことができます。もちろんこの方は今は幸せに暮らしていて、DJをやっているそうですが、自分と同じ時代に生きている方が、想像を絶する生き方をしてきたと知ってショックを受けました。いかに、日本が平和で幸せで恵まれているか・・・
そして、入口でみた光景を思い出しました。そうです。入口で見たたくさんの方々の映像は、ICRCによって助けられた、過去に壮絶な体験をしてきた方達だったのです。
何人か聞いてから次の部屋へ行きました。今はコロナ禍なので、このような手で触る部屋はクローズしていました。残念・・・
次の部屋に行くと、たくさんのポスターが貼ってありました。12,000枚もあるそうです!
ポスターの横の部屋にはちょっと面白い映像がありました。これはたぶんミスタービーンですよね!
スピーカーの横にいる人、石の上に座っている人がいます。そして、
水槽の横に、バケツと一緒に立っている人がいます。水槽の中をよく見てみると、奥のスクリーンの映像と全く同じになっています。
スピーカーの人が何やら叫び始めました。
それと同時に、こちらの人がバケツを手にしました。
そして、バケツの水を水槽に入れたのです。
その瞬間、スピーカーの人はスピーカーの上に、石に座っていた人は高台に登りました。そして、奥のスクリーンを見て下さい。そうです。洪水です。水槽とスクリーンがリンクしていて、焦る様子や驚く様子を表現していました。
次の部屋にはまたスクリーンと椅子があります。椅子に座ると、正面に映った人がその人の経験を話してくれます。
次の部屋は、戦争捕虜の拘束された時期や場所、その人の近況を記したメモを保存している部屋です。世界中で行方不明になった人を探すのに、特徴なども書いてあるので、とても役立ったそうです。
こちらは、1994年のルワンダで行方不明になった子どもたちの写真ですが、この子達は当時のショックのあまりに話せなくなったり、記憶が無くなってしまった子や、当時のことを話せない子の写真で、先程のメモを作ることができないために、顔写真を一般公開して家族を探したそうです。この方法で約2万人の子どもたちを家族の元に返すことができたんだとか。素晴らしいですね。
こちらの部屋では、電話をしている様子の写真がたくさんありました。これはバクラム刑務所に入っている囚人達ですが、バクラム刑務所は、家族との面会を禁止している刑務所です。そこでICRCの協力によって、面会ができないのならと、衛星電話システムを使って家族と連絡を取らせてあげたそうです。この方法によって囚人の70%の人たちが家族と連絡を取れたそうです。
ここで、冒頭での私の話に戻りますが、「人権」ってなんでしょう。戦争中、罪のない人々に普通の生活をさせてあげる、とか何もしていないのに冤罪で逮捕された方を救うとか、心に深い傷を追った子供たちを家族の元に返してあげる、とか色々と見てきましたが、この最後の電話での映像にとても驚きました。囚人というのは、何かしらの罪を犯した人です。罪を償うために刑務所に入っているわけですが、ICRCの方々はその囚人たちの人権を尊重して動いているのです。当たり前のことですが、難しいことです。頭ではわかっていても、囚人と聞くと、悪が最初に来てしまいがちですが、そうではなくて、囚人も一人の人間であり、家族と会う、あるいは会話をする権利があるのです。それを痛感した瞬間でした。
一番最後の部屋にはこのような空の写真がありました。なんか、青空を見たら、心がすかっとしました。普段、何不自由なく過ごせていることに感謝しないとですね・・・!
入口に戻ると、グッズと本の販売コーナーがありました。
赤十字国際委員会(ICRC)が何をしている組織なのか、詳しく理解出来てよかったです。ジュネーブには国際機関がたくさんあり、それぞれ見学したり、こうして博物館になったりしていますので、時間があれば是非訪問することをオススメします。
以上、Musée international de la Croix-Rouge et du Croissant-Rouge(国際赤十字博物館)でした。
Musée international de la Croix-Rouge et du Croissant-Rouge(国際赤十字博物館)の場所
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最後までお読み頂きありがとうございました。人権について深く考えさせられますね。私達って本当に幸せだな・・・!と思っていただけたら、是非「ぽち」っとお願いします♪押して下さるとブログを更新する活力になります♪
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